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国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて 佐藤優

成分

2002年「鈴木宗男事件」で背任及び偽計業務妨害の容疑で逮捕され、2005年に有罪判決を受けた外交官佐藤優氏の告白手記。

外務省、自民党、検察庁などを主な舞台とした、国策捜査における壮絶なまでの「国対個人」の戦いが綴られています。

キーワードは「嫉妬」と「時代のけじめ」。

卓越した情報マンであるノンキャリア佐藤氏に対する同僚たちの「嫉妬」、有能な叩き上げ政治家鈴木宗男に対する周囲の人たちのそれが、本書の主題の背景となっています。

佐藤氏を担当した西村検事の鈴木宗男評。「要するに気配りをよくし、人の先回りをしていろいろ行動する。そして、鈴木さんなしに物事が動かなくなっちゃうんだな。それを周囲で嫉妬する人がでてくる。(中略)相手のためとも思うけど、相手は感謝するよりも嫉妬する。その蓄積があるタイミングで爆発するんだ。」(272~3頁)

そして、時代のパラダイムシフトが起きる際に必要とされる「時代のけじめ」。そのスケープゴートにされてしまったのが鈴木宗男であり、佐藤氏は鈴木を犯罪者として仕立てるための糸口として、共犯者の役割を担わされます。

旧来の価値観から新しいそれへ移行するには、旧価値観の象徴となる存在が見せしめとして断罪される必要があり、鈴木は「運悪く」その生け贄とされた、という見方です。

同じく西村検事の言葉。「国策調査の対象となる人は、その道の第一人者なんだ。ちょっとした運命の歯車が違ったんで塀の中に落ちただけで、歯車がきちんと噛み合っていれば社会的成功者として賞賛されていたんだ。」(290頁)

これら2つのキーワードを中心とした重層的なドラマに、読者はぐいぐいと引き込まれていくことでしょう。

効能

抗うことの出来ない国家権力に対しても、自分の良心と信念に従い生きる筆者のたくましさに、あなたの心も力強く共鳴することでしょう。

使用上の注意

キャリア達(筆者はノンキャリ)の行動から漂う鼻持ちならないエリート臭、有能さを自負することによる上から目線などは、人によっては不快感をもたらすかもしれません。そのような場合には「こういう世界もあるんだ」と淡々と眺めておきましょう。

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Posted at 07/06/21 18:06 | Edit

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